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Chap.5-3 Sovereign state -独立国-   [Chapter5 空中都市]


「先ほどはありがとうございました。」
 バルフレアの隣をキビキビとした足取りで歩きながら、ラモンは言った。

 ラモンからいきなり1万ギルを出されて釣り銭が足りずにオロオロする地図屋モーグリを見かねて     いや、やり取りが人目につくのを憚って     バルフレアが代わりに金を払ったのだった。
「何か代金の代わりになる物があればいいのですが・・・」
 ラモンは神妙な顔で言うと、何度も自分の持ち物に目を遣った。だが、上等な服も装身具も、子供の身にはいささか豪勢すぎると思える剣や盾の設えも、どれ一つとっても地図1枚の代金に釣り合いそうなものは見あたらない。もっとも、そんな適当なものがあれば代金の代わりに地図屋に渡すこともできたのだが。
「礼をする気があるんなら、野次馬が寄ってくるようなマネは止めるんだな。」
 バルフレアは通りの雑踏に目を遣りながら素っ気なく言った。
「カネは魔石鉱への案内料に上乗せだ。・・・言っとくが、俺の案内料は1万ギルじゃ足りないぜ。」
 その皮肉とも冗談ともつかない言葉に、ラモンは一瞬驚いた顔をしたが、
「分かりました。」
 すぐに心得たような大人びた笑みを返して頷くと、少年らしい軽い足取りで、前を行くヴァンの方へ駆けていった。

「・・・食えない坊ちゃんだ。」
 バルフレアは、ヴァンと並んだ少年の小さな背中を見て苦笑を漏らした。






 トラヴィカ大通りの商業区は、観光客とビュエルバ市民とで実に賑やかだった。高地特有の強風を避けるために作られたという高い石塀に囲まれた通りを物珍しそうに歩く観光客には、通りの角という角にいるらしい政府公認の観光ガイドが、如才ない物腰で案内している。
「空に浮かぶ大地のことをプルヴァマといいます。ですから、この街はドルストニスという名前のプルヴァマに築かれているというわけです。ドルストニスはこの空域最大のプルヴァマですが、それでも平地が少ないため、街は丘陵地に沿うように作られていて、たくさんの坂道で結ばれているんです。」
「うむ、上空から見るとまるで森に包まれた隠れ里が浮いているようだったが、いざ降り立ってみると、さながら空に向かって開かれた港町の風情があるねえ。」
 コロコロと太った裕福そうな観光客は、緑の山に向かって伸びる石造りの街と眼下の青空に代わる代わる顔を向けながら、しきりに感心したように頷いている。
 その脇を通り過ぎるビュエルバの若い女達は、少し退屈したように他愛もないお喋りをしながら通り過ぎる。
「今日は採掘がお休みだから、彼のお弁当を作らなくていいわ。たまにはこんな日があってもいいよね。」
「今日は帝国から視察団が来るんですって?」
「そうらしいわ。でも、せっかくゆっくり出来るのに、カフ空中テラスもクス空中広場も帝国兵の通行規制で行けないんて皮肉よね。久しぶりにとっておきの空からの眺めを楽しもうと思ったのに。」
「長いことビュエルバに住んでいると、街が空中にあるって忘れそうになるのよね。ここから落ちたらどうなるのかしら・・・。」
「あら、見て。ヴィエラ族がいるわ。」
「ほんと!珍しいわね・・・」

 呑気な声がヴァンの耳を通りすぎていく。
 どこかピリピリした緊張感と溜息のような沈滞感が同居しているかのような今のラバナスタと違って、このビュエルバの街は、通りを行き交う人々の表情にもどこか大らかな明るさのようなものを感じた。
 それは、魔石で潤う豊かさのせいだろうか。
 それとも、ダルマスカにはない独立国ゆえの自由さのせいなのだろうか。
「申し訳ない、ここは一時通行止めだ。事情は証せないが、ビュエルバ政府の許可は得ている。回り道してくれないか。」
 東へ向かう通りという通りを封鎖している帝国兵が、穏やかに、だが断固として道行く者の前に立ち塞がっている。それは一見するとダルマスカと変わらないようにも見える。
 だが、
「帝国兵の姿を見かけても誤解無きように。ビュエルバは決して帝国の領地ではありません。中立国として、帝国軍の寄港を認めているだけです。」
 剣をさげて緑色の上着にヘルメットを被った軽装の兵士が、ダルマスカ人らしい男に誇らしげに話している。魔石鉱に出稼ぎにきたらしいその男は、警備兵の言葉を聞いてほっとしたように頷いている。
「なあ、あの兵隊、何?」
 ヴァンはバルフレアの方を振り返った。
「ビュエルバ警備兵という政府直属の自衛組織だ。ラバナスタの帝国兵並みにあちこちにいるぜ。」
「・・・ふーん・・・」
 ヴァンが通りを見ると、確かに同じ服を着た兵士が人波に混じって何人も巡回しているのが見える。ビ
通りに置かれた大きな木箱に腰掛けた女が、
「今日はやけに帝国の兵隊が多いわね。いつもは休みをもらった連中しかいないのに・・・。何かあったの?」
 と兵士に向かって尋ねると、
「帝国兵が目障りですか?ご安心ください。ここビュエルバは独立国です。奴らが問題を起こせば、我々が厳しく取り締まります。」
 兵士は誇らしげに胸を叩いてみせた。
「独立国か・・・」
 ヴァンはその兵士を見遣りながら、思わずつぶやいた。その声に滲むものを感じて、ラモンが怪訝そうにヴァンを見上げた。
「俺達もあんな風に言ってやれたらいいのに     
 抑えようもない羨望の言葉が、ヴァンの唇から漏れた。だが、
「独立国ねぇ。」
 バルフレアは皮肉な声で低く笑った。
「客の警備も自前で出来ずに独立国とはな。・・・笑わせるぜ。」



 ヴァン達が人波に混じって大通りを進むと、商業区は更に賑わいを増してきた。ビュエルバ名物という強い風すらも、人混みに阻まれて立ち消えてしまったかのようだ。人いきれにむせかえるほどの混雑は、どうやら1件の店の前に出来た行列のせいらしい。
「こちらはビュエルバで最も行列のできる武器屋ですよ!」
「政府認定の安心の品揃え!旅立つ方もルース魔石鉱で働く方も武器が無くては始りませんよ!」
 元気な呼び込みの声が響く店の前には、ヒュムに混じってごつい体つきのバンガやシーク達がひっきりなしに入っていく。『政府認定武器商 タージ武器店』と大書されたピカピカの看板を掲げたその武器屋は、随分と流行っている店らしい。
 物珍しげなヴァンの顔を見て、並んでいた採掘作業員らしい男が、まるで自分の店のような顔をして自慢げに言ってきた。
「どうだい、すごい行列だろう?ここはビュエルバ最高の武器屋だからな。行列がとぎれることがないんだよ。」
 そう言った男がしきりに目を向ける先では、
「いらっしゃいませ!タージ自慢の武器やの数々、じっくりご覧になってくださいね。」
 と、店の入り口で若い娘が弾けるような笑顔を振りまいている。この店の看板娘といったところか。
(なーるほど・・・)
 なんだかとても納得したヴァンは、ラモンに尋ねた。
「どうして魔石鉱で働くのに武器や防具が要るんだ?」
 ヴァンは、素朴な疑問を当たり前のようにラモンに聞いた。
「ルース魔石鉱には魔物が出るので、身を守る準備をしないと危ないんです。」
 ラモンも当たり前のようにさらりと答えた。
「作業員を魔物から守るために、採掘用心棒と呼ばれるガードがたくさん雇われているそうです。それでも手に負えない魔物が出ると、モブとして各地のクランに討伐依頼を出すこともあるそうですよ。」
「ふーん、魔石を掘るのも大変だな。」
 少年の丁寧な説明に実に単純に感心するヴァンは、後を歩く大人達が自分達を見て苦笑いしていることを知らない。
「・・・ったく、どっちが子供だ?」
 皮肉るバルフレアにバッシュが返す控えめな微笑は、「どちらもだな。」と言っていた。
 察したフランも、傷一つ無い豪奢な盾を背負ったラモンの背を見ながら頷いた。
     とても、『読書』が好きな坊やみたいね。」

「お前も何か武器でも買うか?おごるのは・・・無理だけどさ。」
 行列に興味をひかれてヴァンは思わず言ってみたものの、懐が空っぽではなんとも格好がつかない。
「いえ、僕はこのジュワユースで充分ですから。」
 ラモンは振り返ってニッコリ笑うと、腰の優雅なレイピアに手を遣った。確かにその辺りの武器屋の品よりよほど高級そうだ。こんなもの、いったいどこで売ってるのだろう。FF11だろ?
「あっ!」
 ラモンは、何かに目をとめると、急にヴァンの手を取って足を速めた。
「行きましょう!」
「おい、急になんだよ!?」

 ヴァン達が行列を横切って人波に姿を消すのと入れ替わるように、武器屋の隣の煤けた扉が大きく開いて、二人の帝国兵が姿を現した。
 扉の上の蜘蛛の巣が張った看板には『リシル防具店(政府認定防具商)』と色褪せた文字と『魔石鉱での作業時は、身を守る防具が必要です。当店は政府認定防具店なので安心です。』という謳い文句が見える。その傾きかけた看板を振り返りながら、二人の帝国兵は呆れたように首を振った。
「随分客の少ない店だったなー。閉店してるのかと思ったぞ。」
「看板娘があれじゃな・・・」
「おかげで探しやすかったが、見つからないんじゃ同じ事だ。」
「・・・せめて看板娘がイカしたヴィエラだったらな~。」
「いつまで言ってる!プルヴァマにヴィエラが来るわけ無いだろう、次行くぞ!急げ!」
 帝国兵達は兜の下で呆れた声をあげると、長い行列が出来ている隣の武器屋へ向かっていそいそと走っていった。







「オープンほやほや!マイテの魔法ショップにどうぞお立ち寄りくださ~い!」
「魔石採掘中の体力回復、魔物撃退のお供に、是非当店の魔法をご購入くださ~い!マイテのお店は政府公認の魔法ショップだから安心ですよ~!」
 ヴァンとラモンが武器屋の脇で鍵のように曲がった通りを更に南へ下ると、すぐにまた道は西と南へ分かれる三叉路になっていた。角という角にいるはずのビュエルバガイドの姿はなぜか見えず、ビュエルバ警備兵も三叉路のすぐ南にある小綺麗な魔法屋の前で、手持ち無沙汰そうにうろうろしている。
「急にどうしたんだよ?ラモン。」
「い、いえ何でもないんです。」
 やっと歩を緩めたラモンは、彼らしくもなく決まり悪そうに言った。なおも不思議そうなヴァンにラモンが言葉を探そうとした時、
「え~!空中広場に入れないの?!」
 ふいにあがった子供の声に、ヴァンとラモンは声のした右手を見た。西に下った坂のすぐ先をやはり帝国兵が封鎖していて、母子連れのヒュムが通せんぼされている。どうやら封鎖されているのは魔石鉱へ向かう東の道だけではないらしい。
「申し訳ない、ここは一時通行止めだ。事情は証せないが、ビュエルバ政府の許可は得ている。今日は我慢してくれないか。」
 言葉は丁寧でも頑として譲らない帝国兵の前で、母親と一緒に遊びに来たらしい子供ががっかりと肩を落としている。
「ちぇっ・・・」
 ヴァンはその小さな背中を見て、この街に来てもう何度目かの舌打ちをした。見慣れているけれど、ダルマスカの外では見たくない光景だった。
 憮然としたヴァンの表情に気付いて、暇そうにぶらついていたビュエルバ警備兵が決まり悪そうに笑った。
「この先のクス空中広場の担当なんですが、帝国の兵士に追い出されてしまいましたよ。まあ、代わりに警備してくれると言うんですから、ありがたくサボらせていただきますかね。」
 ビュエルバ警備兵はそう言うと、魔法屋の前の人だかりへとぶらぶら歩いていった。その言い訳みたいな笑顔が、ヴァンには酷く情けなく見えた。

 見ると、魔法屋の先で通りは高くて白い塀にぶつかっていた。東西に延びる通りと交差した三叉路の先は居住区らしく、塀に囲まれた質素な作りの石造りの住宅が見える。
 人気も減った歪な辻では、急な休業に暇をもてあましているのであろう、逞しい体つきの採掘作業員達が、塀の向うでザワザワと風に揺れる木立の陰を見つけては、思い思いにたむろっていた。
「ルース魔石鉱での仕事が休みになったのに、浮き雲亭へ行く道は帝国兵が通行止めさ。まったく酒ぐらい自由に飲ませろってんだ。」
「今日から魔石鉱で働く予定だったのに、帝国の偉い奴が来るとかで臨時休業になって、出鼻をくじかれたよ。せっかくナルビナから出稼ぎに来たってのになんだかやる気無くすよなぁ。」
「帝国の連中がうろうろしやがって、気にくわないぜ。」
 愚痴る男達の中で、採掘用心棒らしい太い腕をしたバンガが吐き捨てるように言った。
オンドール侯爵は断固、帝国の圧力をはねのけるべきだ。・・・オレはそう思うけどな!」
 吼えるバンガに頷きながらも、若い女のヒュムは開き直ったように手を振った。
「帝国軍が駐留するのは嫌だけど、逆らってダルマスカのように占領されるよりいいわ。独立を守るために、多少の不満はこらえなきゃ。」
 その声に他の男も神妙な顔で頷く。
「ビュエルバは領土が狭いから田畑も少ない。採掘した魔石を輸出して食料を輸入しないと俺達は食っていけないんだ。・・・売るも買うも、今は帝国を通さなきゃどうにもならないからな。」
「オンドール侯爵は帝国と適度に距離を保ってるから、今のところ帝国との関係は悪くないが、今後はどうかな。」
「どうせ帝国の意向次第だろ?」
「なんか、帝国の大艦隊がビュエルバ付近に集結中らしい。そのまま占領なんてことにならねえだろうな?」
 不安げな目をしたバンガが、長いアゴを抱えて大きな溜息をついた。
(どこも同じだな    )
 ヴァンも溜息が出る想いがした。
 ビュエルバ市民は、この国はダルマスカとは違うと胸を張るけれど、帝国を恐れて日和る大人の姿は大して変わりはしないのだ。
『客の警備も自前で出来ずに独立国とはな。』
 バルフレアが鼻で笑った言葉のとおりだ、とヴァンは思う。
 通行規制ぐらい、あのビュエルバ警備兵にだって出来るだろう。それを事情も明かさない帝国兵に黙ってやらせてるなんて、侯爵はただ帝国の言いなりになってるってことじゃないのだろうか。
 それって、本当に独立国って言えるんだろうか。
 
 侯爵が嘘の発表をしてまで守った独立って、これっぽっちのことなんだろうか。
 それとも、これっぽっちの自由すら、守るためにはたくさんの嘘と犠牲が必要だったんだろうか    

「ねえ、お兄ちゃん聞いてよ!クス空中広場で遊びたかったのに、兵隊が通せんぼしてるんだよ。」
 つまらなそうに引き返してきた子供が、不機嫌顔で見ているヴァンを”同志”と認めたのか、ふくれっ面で声をかけてきた。
「ムカツクよな~!とっととアルケイディスに帰っちゃえ!」
 帝国兵を睨み付けて言う、遠慮の無い子供の言葉に、ヴァンもニッコリ笑って大きく頷いた。
「だよなぁ!あいつらとっとと帰っちゃえばいいんだ。・・・なぁ、ラモン?」
「え・・・」
 ヴァンの声に、ラモンはただ戸惑ったような生返事を返した。







「開店ほやほや、マイテの魔法ショップです。スタッフ一同がんばりますので、どうぞごひいきに!」
「まだまだ勉強不足の私達ですが、どうぞよろしくお願いしますね。」
 オープンしたてらしいその魔法屋の前には、若い女の子達がズラリと並んで黄色い声を上げて客を呼んでいる。ヴァン達を追ってきたバルフレア達は、店の前の人だかりに紛れて、いったん足を止めた。
「どうやら二人も見つからずに済んだようね。」
 変わった様子のない通りの賑やかさに長い耳を傾けて、フランが言った。
「目聡い坊ちゃんなのはいいが、あいつらどこまで行ったんだ?」
 バルフレアは魔法屋の人だかりの前で目を細めた。看板ではなく呼び込みの女の子達の笑顔に見とれた男性客が浮かれ顔で次々に魔法屋に入っていくが、二人の少年の姿は見あたらない。
「浮き雲通りも帝国が塞いでて酒も飲めねぇし・・・暇つぶしに買い物でもするか~。」
「やっぱり店員が若い女の子ばかりってのはいいよな~・・・あれ?あんた警備中じゃないのかい?」
「カフ空中テラスの担当なんですが、帝国の兵士に追い出されたんですよ。・・・近頃物騒になってきましたから、私も魔法について学ぼうと考えましてね。決して店員目当てというわけではありませんよ。フフン。」
「そこの魔法屋さん、店員がみんな若い女の子なのよ。男共が鼻の下を伸ばして入ってくわ。あなたものぞいてみたら?」
「あいにく、いい女なら間に合ってるんでね。」
「あら!あなたヴィエラと一緒なの?珍しいわね!」


      この分だと、魔石鉱への道は完全に封鎖されているかもしれんな。」
 店の前で鼻の下をのばしている男達とは似ても似つかぬ厳しい表情で、バッシュが言った。
「向こうから呼びつけといて、それはないだろう?」
 物好きそうなヒュムの女を受け流しながら、バルフレアは笑った。
「俺が入れなきゃ意味がないんだ。場所を変えるなら向こうから繋ぎをつけてくるさ。」
「だが彼らが既に魔石鉱の中にいるとしたら・・・」
「中で缶詰にされて身動き取れずにいるってか?・・・そこまで間抜けな連中じゃない。」
 そこまで言ってバルフレアはフランと顔を見合わせると、ヒョイと肩をすくめた。「    たぶんな。」
「しかし、要人警護で魔石鉱を休業させているなら、坑道の入り口も真っ先に封鎖されていると考えるのが     
「俺は開いてると思うぜ。」
 バッシュの言葉を、バルフレアは意味ありげに遮った。
「なぜそう思う?」
「バッガモナンの奴、どうやらあんたの弟・・・いや、ジャッジマスター・ガブラスとつるんでるらしいからな。」
「!」
 顔色を変えたバッシュの鋭い視線をいなすように、バルフレアは背を向けた。
「ナルビナじゃなかなか御昵懇って感じだったぜ。どんな甘い汁吸わせて貰ってるのか知らないが、バッガモナンの奴、ヴェインに尻尾も向けられないって調子さ。・・・ったく、情けない野郎だ。」
 飄々としたバルフレアの言葉を聞きながら、バッシュの目が一層の鋭さを増した。それは、彼の眼に映るものに全く違った光が当たったことを示していた。
「まあ、そう肩に力を入れないことだ。そんな不景気な顔じゃ、この街じゃかえって目立っちまうぜ。」
 バルフレアが人をくった笑みをバッシュに向けると、
「坊やが戻ってきたわよ。」
 フランが雑踏の向うを見て言った。
「坊や『達』じゃないのか?」
 見ると、何やら困惑した顔で店の脇の通りから戻ってくるのは、ラモン1人だった。

 


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