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Chap.3-14 The Mimic- Queen -ミミッククイーン- [Chapter3 地の底で見たもの]


 ゼバイア大空洞から北に延びていた狭いトンネルは、すぐに再び鈎のように大きく曲がって、石造りの小さなプラットフォームのような場所に続いていた。 そこから目指す南に向かって短い坑道が延びていて、乾いた泥で汚れた壁には歪んで外れかかった表示板がかかっている。
 ヴァンはその表示板を見上げた。
「こっちは・・・『第4ターミナルステーション』。・・・ターミナルだけでいくつあるんだろ?随分大がかりなトンネル作ってたんだな。」
 思わず口に出して、ヴァンは言った。
 ここに来る途中でも、閉じられたまま空かないフェンスで仕切られた坑道が幾つも分岐していたし、あの巨大な大空洞の向うにも坑道は走っていたのだ。建設途中といっても地下道全体はどれだけの広さなのか見当もつかない。完成していたら本当に蜘蛛の巣みたいになってたんじゃないだろうか。
 そしてこのトンネルの中を、数珠繋ぎになった電気仕掛けのチョコボ車みたいなのが、縦横に走るはずだったのだ。
「こんな面倒なことして地下に潜らなくったって、飛空艇飛ばせばいいのにさ。」
 ヴァンの口から、素直な疑問がもれた。
「飛空艇ならレールなんか無くても自由に飛べるし。・・・飛空艇って、この地下道よりずっと昔からあるんだろ?」
 ヴァンは言った。
「・・・ずーっと昔、ゴーグの鉱山で大きな浮遊石を掘り出したモーグリが、飛んでいきそうになった石を捕まえようとして、自分も石と一緒に空に飛んでった。どんどん風に流されて、着いた所が空中大陸。あんまり高くてモーグリの羽根じゃ飛んで降りれず、空から下を眺めて途方に暮れてたら、ある日真っ逆さまに落っこちた。落っこちたけど、無事にどこかの海岸に流れ着いて、今度は3年かけて歩いて帰ったって。」
 ヴァンはプラットフォームの階段を2段ずつトントンと駆け下りた。
「・・・帰り着いたモーグリは、今度は小さな帆船に浮遊石を乗っけて自分から空に飛び立った。・・・それが飛空艇の始まりだって。」
 すると、バルフレアが何だかうんざりしたように眉をピクリと動かした。
「・・・その話は耳にタコが出来るほど聞かされたよ。」
「誰に?」
「うちの機関長。」
「へ?」

「確かに、飛空艇はモーグリ族の昔話に出てくるほど古いものだが     
 イヴァリース中の子供達が聞かされてきた物語に微笑しながら、バッシュが言った。
「グロセアエンジンが一般化して、鳥より多くの飛空艇がイヴァリースの空を埋めるようになったのは、そう昔のことではない。当時は地下鉄道網建設もさほど不合理なものではなかったはずだ。」
「ダルマスカではな。」
 バルフレアがその言葉を遮った。
「地下資源が豊富でミストが安定してるダルマスカは、グロセアエンジンの導入も改良も遅れた。・・・たった半世紀前まで穴を掘ってたとは、随分呑気なもんだ。」
「ふーん・・・」
 ヴァンは頷きながら口を尖らせた。そりゃ、言い出したのは自分だけど、そういう言い方をされると、やっぱり少しカチンとくる。確かにビュエルバやアルケイディアの飛空艇は進んでるし、だからダルマスカは戦争に負けたんだって言う大人もいるけれど。
 ヴァンはバッシュの方をチラリと盗むように見た。
 バルフレアの隣で何も言わずにいる彼が、何だかもどかしい。
「あーっ!空が見たいな!」
 ヴァンは黄色い灯りに照らされた埃っぽい天井を見上げながら、「第4ターミナルステーション」と書かれた区域へ足を踏み入れた。
「早く出ようぜ、こんなとこ!」
「・・・ならば、心する事ね。」
 弓を手にしながら、フランが言った。
「え?」
 立ち止まったヴァンの脇を、剣を抜きはなったバッシュが駆け抜けた。


 見上げるヴァンを照らす電球の光を、巨大な影が遮った。
 立ち止まった足から、腹の底から突き上げるような地響きが伝わってくる。
「う・・・」
 ヴァンは息を飲んだ。

 巨大な鉄骨を組み上げたような青と緑の光を放つ、長く鋭い足。
 飛空艇のエンジンのように唸りをあげる透き通った一対の翅。
 虹色の金属色に輝く巨大な腹。
 一体の巨大なミミックが、ヴァンの視界を覆い尽くすように立ちはだかっていた。
 バルフレアが銃を構えながら呟いた。
      ミミッククイーン。女王だ。」
「女王・・・」

 その七色に煌めく腹がブルブルと震えるたび、壺の形にそっくりのミミックが、どろりとした粘液と一緒に1体、また1体と産み落とされていく。新たな命は、地に降りるやいなやもつれるような勢いで壁に向かって走ると、壁沿いに取り巻く電力ケーブルを鋭い歯でゲーブルを食い破る。
 女王がその青く輝く長い足をゆっくりと踏み出す。
 鋭い爪が石畳を深々と抉ると、円形の空間が地響きと共に震えた。
 天井からバラバラと土塊が降る中、抜き身の剣を構えたバッシュが、ゆっくりと前に進み出た。
 女王の狂気じみて無慈悲な目が、その姿を捉えた。
      キシャァァァッッ!!」
「くるぞっ!!」



「・・・たゆとう光よ、見えざる鎧となりて小さき命を守れ・・・」
 フランの唇から詠唱が流れる。
     プロテス!」
 虹色の光がバッシュを包んだ瞬間、雷の如き女王の爪が打ち下ろされる。
 かわす盾も砕けんばかりの激しい音が響き、勢い余って地を抉ったその足に、
「はっ!!」
 剣一閃、激しい火花が飛び散る。
「キギャァ      ッ!!」
 大音声をあげる女王の喉元目がけて銃弾が飛ぶ。躍り上がる女王に、銃弾は虹色の鋼鉄を綴り合わせたかのような胸に弾ける。耳を劈く金属音がターミナルを震わせる。
 ヴァンも短剣を手に相手の懐に飛び込もうと間合いを計る。フランからプロテスをもらって、さあ行こうというその時、目の前を生まれたてのミミックが飛ぶような勢いで突っ走った。幼生は次から次へとターミナルを取り巻く電力ケーブルに取り付いていく。
 壁のあちこちで青いスパークが散った。
「え、ええと・・・」
 ヴァンは鼻を突くオゾンの臭いの中、巨大な女王と走り回る幼生との間をキョロキョロと見回した。
(どいつからやったらいいのかな・・・)
 もたつく間にも、巨大な金杭のような女王の足が振り下ろされる。
「シャアッ!!」
「う、うわっ・・・ととっ!・・・じゃあ     お前だ!」
 ヴァンはとりあえず近くの壁に張り付いた幼生に向かって斬りつけた。
「キィッ!」
 一太刀浴びたミミックは飛ぶように壁沿いを走って逃げ出した。
「待てっ!」
 ヴァンもすかさず逃げたミミックを追いかける。
 建設途中の円形のターミナルは、壁沿いに並ぶ円柱に支えられ、そこから放射状に延びる通路の入り口だけが出来ていて、まるで巨大な歯車のような形をしている。その凸凹の壁に沿って足がもつれんばかりの勢いで逃げるミミックには、足にいっぱしの自信を持っているヴァンでも、とても追いつかない。
 ならばと、他の場所でケーブルを囓っているミミックに斬りつけると、またそいつが逃げ出した。
「待てぇー・・・」
 と、届かない短剣を手に再び追いかける。
(なんか変だな・・・)
 傍らでは矢が唸り、剣戟と銃声が女王の叫喚と激しく交差している。耳を劈く轟音と、足下を揺らす地鳴りの中で、ヴァンは首を捻った。
(・・・もしかして俺、走ってるだけ?)

 そんなヴァンのことなどまったくお構いなく、ミミッククイーンは自らを取り巻く三人に向かって、烈しい電光のようなすさまじい勢いで巨大で長い腕を打ち下ろし、立ち塞がるバッシュの剣が、そこに重く鋭い刃の一撃を刻んだ。
「とおっ!!」
「キシャァァッ!!」
「っ!!」
 盾も砕けんばかりの一撃に、踏み止まろうと堪えるバッシュ足が石畳の上で火花を散らす。
 受け流す身をそのまま相手の腹の下に滑り込ませ、虹色に輝く下腹に切りつける。
「ギャァーンッ!」
 女王は苦痛に激しく巨体を震わせる。バタつく巨大な足は破城槌のように唸りながら、足下に立ちはだかる男を弾き飛ばす。
「ぐぅっ!!
     .ケアル!」
 バッシュが消耗すればフランが回復魔法を唱える。敢えて飛び出したバルフレアが煌めく巨大な目に弾丸を撃ち込めば、女王は怒りに震えてその的を移す。
 襲いかかる鋼の顎をかわしつつ、バルフレアは充分間合いを取りながら、軟らかく膨らんだ下腹に、的確に銃弾を撃ち込んだ。
 だが、
「キィッ!」
 壁を背にして下がった所に、側でケーブルを囓っていたミミック達が飛びかかった。
「ちっ!」
 バルフレアはそれを銃床でたたき落とす。次々に寄ってくる相手は、間合いが狭すぎて撃つことが出来ない。
 そこへ押し潰さんばかりの勢いで突進してくるミミッククイーンが、鋼の爪を打ち下ろす。
「くっ!!」
 女王の腕が勢い余って壁を砕く。盾もない身を襲う衝撃に、思わずバルフレアの膝が折れる。
 駆け寄るフランにもまたミミックが飛びかかる。鋭い蹴りからハイヒールの踵がミミックの頭を叩きつぶす。それでも目の前にいる者に襲いかかる幼生達は、魔法を詠唱する間も弓の間合いも与えない。
「・・・清らかなる生命の風よ、失いし力とならん!・・・」
 やっと追いついたヴァンが走りながら悲鳴のように叫んだ。
     ケアルッ!」
 詠唱もそこそこに二人に飛びつくミミックを必死で追い払う。手負いの蜘蛛はやっぱり逃げるが、今は追うどころじゃない。
「ったく、ママのおかげで狭くていけないぜ。」
 肩で息をしながら、それでも憎まれ口だけは達者なバルフレアに、
「だったら剣でも盾でも使えよな!」
 ケアルの代わりに蹴りでもくれてやろうかと思うヴァンに、ミミッククイーンの長い腕が襲いかかる。
「キシャァッ!」「     っ!」
 その矛先を、飛び込んだバッシュの剣が横一文字になぎ払う。
「ギャァァァンッ!!」
     みんな、散れっ!!」
 バッシュの声に、三人は左右に飛び退く。一瞬怯んだ女王の前に、バッシュは一人立ちはだかる。剣が、鋼の爪を斬り払い、鋼鉄の鱗郭を断ち割る。たまらず女王が上げる悲鳴にターミナル全体が地鳴りのように揺れる。
 ヴァンは思わず息を飲んだ。
(強い・・・)
 かつてダルマスカ一の武勇を称えられ、若者達の尊敬を一身に集めた将軍とはいえ、彼が剣を振るう姿を見た訳じゃなかった。
 記憶の中の姿よりずっとやつれてはいるけれど、2年もの間幽閉されていながら、これだけ戦えるんだ      .
 髪を振り乱しながら剣一つで巨大な魔物と渡り合うその姿を凝視して、ヴァンは歯を食いしばった。
 そして、短剣を握りしめると、バッシュに気を取られているミミッククイーンの足の間に飛び込んだ。
 目の前に突き刺さる足を転がるように避けながら、その鉄骨のような青い足に切りつけ、下がってくる下腹に短剣を突き上げる。
「えいっ!!」
「シャアッ!!」
「うわっ!!」
 はじき飛ばそうとする足を間一髪で避けて思わず足がもつれるヴァンの前に、背中に庇うようにバッシュが割って入る。
「無茶をするな!」「ほっとけよ!」
 ヴァンはバッシュの顔も見ないで怒鳴り返すと、またクイーンの足下に身を躍らせた。
「こっちは毎日帝国兵の懐狙ってて、逃げるのは慣れてるんだ!・・・うわっとぉ!!」
 ヴァンが襲いかかる女王の爪から飛び退いた、その時、
       .ターミナルの照明がガクンと落ちた。

 突然襲った薄闇の中で、クイーンの体が七色の極彩色にギラギラと浮かび上がる。その腹が激しくブルブルと震えて、前四本の足が遙か高くに振り上げられた。
「グゥゥゥ・・・・・・。」
 女王が不吉な唸り声を上げる。
「いかん!」
 バッシュが叫んだ。
「ヴァン、逃げろ!!」「えっ?!」
 その瞬間、ミミッククイーンは空間がねじ曲がるような恐るべき大音声と共に地を撃った。
「うわぁっ!!」
 転がるように逃げるヴァンの足下が、波のように盛り上がって裂ける。
 ターミナル全体が野獣の唸りのような地鳴りと共に、激しく揺れる。
 壁には見る間に亀裂が走り、床は砕け、天井がはがれ落ちる。
 足を取られて倒れたヴァンの上に、天井からは巨大な土塊と岩が降り注ぐ。
「くそっ!!」
 頭の上に翳した盾が破鐘のような音を立てて歪む      .

「あたた・・・」
 突然女王が起こした大地震が収まると、ヴァンはフラフラと立ち上がった。盾を持つ手は痺れ、頭がクラクラする。体全体が肉挽き機にでも通されたみたいに痛いが、なんとか・・・生きてる、かな。
 そこへ、
「ギャァン!」「わぁっ!!」
 息をつく間もなく再びミミッククイーンの鉄槌が振り下ろされる。おぼつかない足で避けるヴァンを背中に庇うように、やはり埃と生傷に塗れたバッシュが割って入った。
「大丈夫か?」
「そっちこそ!      ケアル!」
 ヴァンは無意識のうちにバッシュと自分にケアルをかけて、目の前に聳え立つミミッククイーンを見上げていた。
 こいつも同じミミックだから、暗くなると凶暴になって大暴れする習性は同じなのだ。こんなもの何度も食らってたら、いくら4人がかりでも身が持たない。
 ならば先にケーブルを囓ってる奴らを・・・。
     バルフレア!フラン!」
 ヴァンは怒鳴った。
 フランのケアルが青白く輝く向うで、二人がこちらに目を遣った。
「俺がこいつを引きつけるから、あんた達が子供の方を先にやってくれよ!」
「オーライ。・・・時間稼ぎでいいからな、潰されるなよ!」
 異存なしと片手をあげると、二人はケーブルが囓られていない壁を背にするようにして素早くミミック達から間合いを取った。女王の足の下を縫うようにして矢と銃弾が反対側の壁へと飛ぶ。一心不乱に電気を貪る生まれたてのミミックの頭を、矢と銃弾が次々と砕いていく。
 ヴァンは、目の前のミミッククイーンを見上げたまま、バッシュに言った。
「・・・援護してくれよ。」
 そして、返事を聞く前に巨大な女王の腹の下に飛び込んだ。

 灯りの確保を優先するにも、素早く動く幼生相手に短剣片手に追い回しても埒があかない。でも銃や弓なら逃げる蜘蛛も追いやすいはずだ。ならば自分がやることは、何としてでもクイーンの気を逸らして、二人が幼生の始末に専念できるようにすることだ。
「このっ!」
 ヴァンはバッシュを襲う長い足の間をかいくぐりながら、女王の鮮やかなの虹色の腹に短剣を突き出した。
「こっち向け!」
 バッシュが盾になるより、自分が餌になってバッシュが攻撃してくれた方が、与えるダメージは大きいはずだ。
 だが女王は足下で走り回るヴァンのことなど意に介さないように、目の前に仁王立ちになったバッシュに向かって鋼鉄の顎を繰り出す。
「くっ!!」
     ケアル!!」
 ヴァンは怒鳴るようにバッシュにケアルをかけると、がむしゃらに女王に向かって短剣を振り回した。
「畜生!俺が相手だって言ってるだろ!」
 ヴァンは短剣をくわえると、目の前に聳え立つミミッククイーンの足に飛びついた。
「このっ!」
 黒光りするその足に、ヴァンは短剣を振りかざす。
 振り下ろそうとした、その時、
「・・・ん?」
 よく見ると、足の関節の近くに何だか黒っぽいカタマリがくっついている。
(・・・お宝かな?)
「いただき!」
 なるほどミミックが好物にするだけのことはあるヒュムの物欲を発揮して、ヴァンは片腕を精一杯伸ばすと、そのカタマリを短剣の先でつつき落とした。
「やった!」
 落ちたお宝を追って、ヴァンはすかさず飛び降りる。ヴァンはクイーンの足の林の間をかいくぐりながら、その歪なカタマリを手に取った。
      が、
「畜生!なんだよ、これ!」
 ヴァンはミミックに囓られた時より大きな悲鳴を上げた。
「ただのサビのカタマリじゃないか!」
 大物がくれたとんだ「お宝」に、ヴァンはヤケになってそのサビのカタマリをミミッククイーンに投げつけた。
「ギャァァァァ     ンッ!!」
「あれ?」
 ボロボロのサビのカタマリをくらったミミッククイーンは、身を捩って喉の裂けるような激しい悲鳴をあげた。
「・・・結構効いたかな?」
「キ・・・シャァァァッッ!!」
「うわっ!怒った!!」
 何だか知らないが、やっとヴァンの存在に気付いてくれたミミッククイーンは、怒りにまかせて物凄い勢いで突進してきた。
 今度はヴァンがミミックの子供よろしくチョロチョロと逃げ回る番だ。
「ヘヘっ!ここまでおいで!」
 ヴァンはさっきの大地震で凸凹になった地面を跳ねるように蹴りながら、巨大な女王の鼻面を右へ左へと引きずり回す。
 無防備に尻を向ける女王をバッシュの一撃が遅う。激しい火花と共に剣は鋼鉄の足を断ち、闇に七色に輝く殻を断ち割る。裂かれた腹からどす黒い体液がボタボタと落ちる。
 さすがの激しい苦痛に躍り上がって振り向いた女王の目が、怒りに震えてバッシュを捉える。緑の不吉な眼光が閃いた、その瞬間、
 唸りを上げる矢が深々と突き刺さった。
「キシャァァァァ     ンッ!!」
 悶える女王のもう一方の眼も銃弾に砕かれる。
 そしてターミナルが再び明るさを取り戻した。
「待たせたな。」
 累々と並ぶミミックの屍を前に、再び女王に銃口を向けるバルフレアに、
「遅いよっ!」
 怒鳴ったヴァンが、思わず息を飲んだ。「あっ・・・」

 暴れる足を止めたミミッククイーンが、唸り声を上げながら巨大な腹を震わせ始めた。
 そして腹の先から、再び粘液と共に次々にミミックが産み落とされ      .

「何を見とれてる!」
 バッシュの声が響いた。
「今だ!!」
 バッシュは地を蹴って、鋼の大樹のような女王の足を駆け上がった。そして、虹色の胴と繋がる足の付け根に、渾身の一撃を振り下ろす。
 関節が破壊される爆発のような轟音と共に、女王の足が一本、根本から切り落とされた。バランスを崩した女王の体が大きく揺らぐ。
 「このぉっ!!」
 負けじと飛び込んだヴァンの短剣が、束も通さんばかりに深々とその腹に突き刺さった。

「ギャァァァ     ッッ!!」

 大音声と共に、残された女王の足から力が抜ける。虹色に輝いていた体がどす黒く光を失う。
 断末魔の声と共に、ミミッククイーンの巨大な体が倒れる。
「やったーっ!!」
 ヴァンの歓声と共に、4人は傾いていく女王の巨体を見上げた。・・・が、
 フランが長い耳をピクリと動かした。「・・・来る。」
「え?」
 キョトンとして振り向いたヴァンが再び女王の亡骸の方を見た。「あ・・・あれ?・・・」
 ぐらりと揺れたミミッククイーンの巨大な体が大きく横倒しになって、ターミナルを支える円柱の一つにのしかかる。破裂したように柱に激しく亀裂が走る。
 地を揺らす地鳴りの中、生まれたばかりのミミックが、狂ったように走り回る。
 バルフレアが怒鳴った。

     逃げろ!落盤だ!!」

 次の瞬間、轟音と共に円柱が次々と砕け散り、ターミナル全体の天井が底が抜けたように一気に崩れ落ちた。

「うわあぁぁ     っ!!」


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